藤本智士さんのトークイベントを終えて ~白も黒もあっていい世界

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完全に、年末ですね。

東京から遊びに来ていた友人を先日無事に飛行場まで送りとどけ、私もようやくしんしんと暮れていく年末を感じています。
約3週間ぶりの、静かな夜。

先日のトークイベントについて書こう書こうと思いながら、どんな視点で書こうかなあとか、じっくり味わいながら書きたいなあとか、そんなことを思っていつまでも書けず、今日ようやく、静まりかえった部屋で一人、この記事を書いています。

「先日のトークイベント」とは、2017年11月30日に開催した四方山商店初のイベント「藤本智士さんトークイベント 魔法をかける編集 ~未来を変える力、編集力とは?」のことです。
⇒イベント詳細や藤本智士さんについてはこちらのイベント案内の記事をお読みください。
(イベント自体は終了しています)

藤本智士さんとの出会い

藤本智士さんのお話を初めて聞いたのは今年の9月。
友人が鳥取県智頭町で藤本智士さんとトークイベントをするというので、高知から初の遠出をしたのでした。

会場となったタルマーリーはパン屋さんですが、こちらの本も有名です。

ずっと行ってみたいパン屋さんだったんですが、智頭町に移転されてからは超絶おいしいビールもつくっているとのうわさで、ますます行ってみたい場所でした。
初の遠出を決心したのは、実はそれも大きかった。(笑)

そしてこのイベントは、友人の小林奈穂子さんが今年出版した本が、藤本さんが出版された「魔法をかける編集」と同じミシマ社の「しごとのわ」シリーズだったご縁で企画されたものでした。

ミシマ社のしごとのわシリーズ

このときはまだ藤本さんについての知識といえば、秋田のフリーマガジン「のんびり」の編集長をされていたことと、友人がとにかくずっと尊敬している人だということくらいだったのですが、その日聞いたお話が、もう最高におもしろくてしびれてしまい、私の暮らす嶺北で、一緒に藤本さんのお話を聞きたい人たちの顔が次々と浮かびました。

そして「魔法をかける編集」の出版記念で日本全国をまわっていた藤本さんが「四国はまだ決まってないんだよね~」と言うのを聞きつけて、早速高知のお山へ来ていただきたいと心に決めたのでした。

満員御礼

さて、トークイベントをすることに決めたとはいえ、ここは高知のお山。
交通手段は車しかなく、周辺には他に店もない。
平日の夜にどこまで集客できるんだろうか?
正直、私の不安はその一点につきました。

ここでひとつ、とてもためになる藤本さんのnoteの記事をご紹介します。
05.イベント企画で大切なこと5ケ条

私これを、イベントの2週間前くらいに読んじゃったんですよね。
プレッシャーに、震えました。
まじで。

でもイベント開催するときにとてもとても大切なことが簡潔にまとめられているので、これからイベント開催したいと思っているみなさんはぜひ読んでおかれることをおすすめします。
ただ、私のように2週間前とかに読むと、震えます。

しかし今回はありがたいことに、定員35名を大きく超える48名の方に参加していただき、たくさんの人に藤本さんのお話を聞いていただくことができました。
ほっと胸をなでおろしたのは、言うまでもありません。(笑)

藤本さんのお話を聞き終わった後、みなさんから「来てよかった!」「楽しかった!」「企画してくれてありがとう!」という言葉もたくさんいただき、主催者としてはこれほど嬉しいことはありませんでした。

藤本さんの編集スタイル

お話は、まずここから始まります。
「本、雑誌だけでなく、広義にとらえて編集者と思ってもらえたらいい。」

藤本さんの編集スタイルはこんな感じです。
「台割りを決めない」
「誰にインタビューするかも決めない」
まずは外に出て、出会いがしらに決めていく。

これは藤本さんの尊敬する笑福亭鶴瓶師匠から学んだことだそう。
藤本さんがつくられた雑誌「Re:S」の作り方は、まさに「鶴瓶の家族に乾杯」ですよね。

「おばあちゃんに話を聞いていると、同じことを何回も何回も言う。
でもそれはおばあちゃんにとって一番言いたいことだから全部載せる。
それがRe:Sのやり方。」

そして藤本さんのされていることは白か黒かを伝えることじゃなくて、白も黒もあっていいじゃない?ってことだと思うんです。

相対的価値ではなく、絶対的価値の時代。
「僕のもいいけど、君のもいいね。」

そう言える方が、しあわせじゃないですか?

カルチャーじゃない

「カルチャーじゃない」
これはトークイベントが終わってから、藤本さんの話について友人と話していたときに出てきた言葉。

カルチャーって言葉をここで使うのが正しいのかよくわからないんですが、私は友人の口から出たこの言葉に「ああ、すごくしっくりくるな」と思ったんです。

藤本さんはずっとローカルに関わってこられて、「今、時代が追いついてきた」なんてことを冗談めかしておっしゃったりしていましたが、藤本さんがされるローカルの話ってカルチャーの話じゃないな、と。

「地方で豊かに暮らす」とかそういうことじゃないっていうか、だから、逆に言えばそういうことはカルチャーだと思うんですね。

藤本さんのされていることや、考えてること、探しているものって、カルチャーではなく、もっと普遍的なものだなと思ったんです。
そしてそれが多分、私が藤本さんにここで話をしてもらいたいと思った理由なんじゃないかなと。

「じゃあそれは何なのか」なんてことは難しくて言葉にできないけど、例えばその地域で昔から食べられているかわいいお菓子があって、でもそのお菓子の価値は見ためのかわいさや素朴なおいしさだけじゃなくて、そこに暮らす人たちの一人一人の思い出の中にあって、そのことも含めての価値なんじゃないか、みたいな。

常にそのことを意識することは難しいけれど、大切に風呂敷に包まれたそれをそっと差し出された時に、ちゃんと気づける自分でいたいなと、思います。

消費されるものになりたくない

そしてそんな話を友人としていたとき、ふと思いだしたのが「消費されるものになりたくない」という言葉。
これはまた別の友人が以前、話していた言葉。

この言葉も、実はずっと心に残っていた。

消費されるってどういうことだろう?
「消費」の意味をググってみるとこんな説明が出てくる。

(金・物・労力などを)使ってなくすこと。

例えば、地方で暮らすことがキャッチーな言葉に置き換えられているのを見るとき、ここでの暮らしとは遠く離れたところで言葉だけが「消費」されていく、みたいな違和感を感じるときがある。

でも一人一人が自分で見つけて、体験して、感じた何かは、消費されるものじゃない。

藤本さんの言う「最小単位のローカルメディアは自分自身である」ことの価値って、そういうところにあるんじゃないだろうか。

そして最後に、藤本さんがプレゼントしてくださったRe:Sの一冊が「一緒にやる」という特集だったことを、ここに記しておきたい。

ページをめくると「自分でやる vs 一緒にやる」の文字。

実は私、「一緒にやる」のが大の苦手。
でも、一緒にやることで広がる世界というのが、あるんですよね、確実に。

これはまた、次までの宿題です。

藤本智士さんの著書

魔法をかける編集

「足りないのは、編集です!」と銘打った、今回のトークイベントのテーマともなった本です。
下記リンク先で、とても丁寧に本の内容紹介が書かれていますのでぜひご一読を。

風と土と秋田 二十年後の日本を生きる豊かさのヒント

こちらも今年の夏に出版された本で、秋田の大人気フリーマガジン「のんびり」が書籍化されたものです。

ほんとうのニッポンに出会う旅

まだ、ローカルに目を向ける人も少なかった時代に「Re:S = Re:Standard あたらしい“ふつう”を提案する」というキャッチコピーを掲げ、もはや「鶴瓶の家族に乾杯」を思わせる独自の手法でローカルを取材し、2006年から約3年にわたり11号までを刊行した雑誌「Re:S」をまとめた本です。

 

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